温泉の噴気に包まれた世界
雲仙の古湯と新湯の間の白い土(温泉余土)におおわれた一帯が雲仙地獄地帯です。
地獄とは仏教の教えで前世の悪業の苦報を受ける所という意味ですが、至る所から高温の温泉と噴気が激しく噴出し、強い硫黄臭が漂う中、湯けむりをもうもうと立たせるさまは、恐ろしげな地獄の景色そのものと言えるでしょう。
雲仙の湯けむりの正体
雲仙地獄のエネルギー源は、橘湾の海底のマグマ溜りだと考えられています。このマグマ溜りから発生した高温高圧のガスは、岩盤の裂目を通って上昇し、その途中で化学変化を起こし、いったん高温熱水となります。その熱水の沸騰によって生じたガスが、激しい噴気となって現れており、雲仙の温泉はこのガスとまわりの山からの地下水が混ざり合って生成されたものです。
温泉の泉質と効能
雲仙の温泉の泉質は硫酸酸性の硫黄泉で、強い酸性を示しています。温泉の最高温度は98℃、主成分は鉄イオン、アルミニウムイオン、硫酸イオン、リュウマチ、糖尿病、皮膚病に効果があります。
また、シューシューと音を立てて吹き出している噴気の最高温度は120℃。大部分が水蒸気ですが、炭酸ガス、硫化水素ガスを含み、強い硫黄臭を漂わせています。
温泉余土と湯ノ花
地獄地帯の岩石は噴気や温泉の熱と酸性水の影響で変質し、白く脱色した粘土状の温泉余土となっています。
地獄の噴気孔のまわりに白~淡黄色の湯ノ花がみられます。これは噴気の硫化水素と土中の鉄やアルミニウムなどが反応し、結晶化したものですが、雲仙の湯ノ花は温泉水中ではなく、地表面に析出するのが特徴です。
雲仙地獄案内地図
雲仙は昔「温泉(うんぜん)」と書き表されていました。
これは、「温泉山満明寺」の山号から来たものですが、やがて風流な文人らが「雲仙」と表すようになり、これが定着したものです。
大叫喚地獄展望所
雲仙地獄の東側に位置し、最も噴気の激しい場所で、間近で噴気現象を観察することができます。展望所には「大叫喚地獄」の石碑が整備されており、記念撮影にご利用ください。
泥火山
雲仙地獄の中で独特な景観を成す「泥火山」です。灰白色の粘着性のある土質のため、地中から噴気で盛り上がり成長する円すい形の小さな山が幾つも形成されます。その日の水分によって異なる山の形になり、同様の仕組みで生じる火山の形のでき方を学ぶことができます。まわりには木製遊歩道が整備されていますので、色々な方向から観察してみてください。
50周年記念広場
国立公園雲仙指定50周年の際に作られた記念モニュメントがある石畳の広場です。地獄巡りの集合場所や、雲仙での記念撮影にご利用下さい。
キリシタン殉教碑
江戸時代に起こったキリシタン弾圧では、雲仙でも改宗させる手段として使われ、拷問が行われました。殉教碑はここ雲仙地獄で殉教した人々の鎮魂の碑です。毎年5月の第3日曜日にはこの地でキリシタン殉教祭が行われます。
雲仙地獄は雲仙温泉街観光のメインスポットで、 大叫喚、お糸、清七など30あまりの地獄があり、噴気孔から真っ白い水蒸気がもくもくと噴き上がっています。
また、江戸時代にはキリシタン殉教の舞台となったところとしても知られています。